2007/05/05

個別化の街

好い夜だ。
こんな夜は、外へ出て、コンクリートとアスファルトと若干の土の混ざった臭いを嗅ぎながら街を歩くのも悪くはない。
が、私の住む所の周辺は歩くべき道を持っていない。
陽が落ちてから一寸出かけようとなるような道が無い。
そろそろここから逃げなくちゃ。
この街の夜は人を停滞させる。
街の形の所為で空気に何か重いガスが充満していて、人に家から出ることを尻込みさせる。
人々は空気に怯えてそれぞれの家の中で孤立する。
外は私の世界ではない。
そこには街造りの悪意すら感じる。
或は美と浪費との素朴な同一視に原因する、美に対する憎悪を。
ここにいたら私は呼吸器から腐敗が進行してしまうだろう。