2010/11/29

烏の話

烏が腕に留まっている。
烏にしては人間に友好的なように見える。
懐かれているのか。
然し懐いているような風でもなく、只私の腕に留まって落ち着き無く動いている。
懐いた動物の甘えたような素振りは見えない。
烏にそれを期待するのは酷だろうか、などと考える。

烏の足、何故か薄汚れたピンク色で、爪が異様に長くて酷く鋭い。
留まった腕に爪が食い込み、その跡は虫に咬まれたように腫れる。
バイ菌でも入ったか。気持ちの悪い。
然し私の頬に諦めた笑みのような筋肉の運動を感じないでもない。
私はこの私に懐いてもいない汚い烏に何か愛情でも感じているのだろうか。

嘴から赤と白のストライプ模様の糸のようなものが垂れ出ていて、途中でプツリと切れて落ちてはまたニュルリと出てくる。
寄生虫だ。汚い。気持ち悪い。
切れた寄生虫が腕に落ちる。
落ちた寄生虫が私の腫れた腕にどのように作用するのか、私はそれが他人の腕であるかのような冷静さを以て興味深く観察している。
そして冷静さを保っている自分を意外に思っている。

目線を上げると烏がこっちを見ている。
厭だ。ああ厭だ。
この烏は私を敵視しているのだ。
或は何か障害に感じているのだ。
懐いてなんかいない。
烏が嘴を突き出す。
私の顔目掛けて寄生虫の垂れた嘴を突き出して腕を上って来る!
ああっ、と思って私は烏を振り落とそうとする。
頬に暴れる烏の翼の触るのを感じたところで目が覚める。

そういう夢を見たのです。
覚醒した蒲団の中で腕に烏の体重、頬に翼の感触の、確かにそこにあったかのような余韻を感じて少々気味が悪かった。