デジタル同軸ケーブルにちょー高いのがあるんだけど、あの値段はどういうことを意味しているんだろう。
どれだけ意味があるんだろう。
どういう訳か音が良くなるということだろうか。
或は断線し難いとか抜け落ち難いとかの信頼性?
耐ノイズ性?
「高いデジタル同軸ケーブルに換えたら音が明らかに良くなりました」というような話も聞く。
ほんとうかなあ、と思ってるんだけど。
私の無知を有効活用して、想像でものを言ってみよう。
デジタル同軸ケーブルの中を通るのは、仕様を調べたことはないが、恐らくデジタルデータだと思うんだ・・・。
まさか実はアナログだったなんてことはなかろう。
デジタル通信の良いところは、データの再現性の高さにある。筈。
とはいえ、データは銅線(或は銀線)の中では(恐らく)電圧の変化で表現されていて、通信中に外的ノイズの影響を受ける可能性がある(筈)。
例えばLANで使われているイーサネット規格ではそういったノイズの影響を排除する為に、データを小分けにしてチェックサムなんかで送り側と受け取り側の間でデータが同一であるということの信頼性を高めている訳だ。
だから普通のLANケーブルみたいにツイストペアの、同軸ケーブルに比べたらノイズの影響を受け易いケーブルを、10mとか、或程度の長さで使っていても、そこでデータが壊れたりすることを殆ど心配しなくて済むのだ。
然しイーサネットのようにデータ同一性をチェックする機構がオーディオのデジタル通信規格にも存在するとは限らない・・・。
例えばアナログの連続的な電圧変化を単に非連続的な電圧変化にしただけのもをデジタルだと謂っているのだとすれば、外的ノイズの影響を考えると送り側と受け手側の間でデータの同一性は必ずしも保証されないということになるし、ノイズが音切れではなく音質の劣化という形で現れる可能性もある。
若しそうだとすれば、同軸デジタルケーブルの品質の善し悪しでデータ同一性に影響が出て、音が悪くなるということも考えられなくもない。
・・・と、「お高いデジタル同軸ケーブルで音が良くなる」論を擁護してみたけど、ほんとうのところどうなんだろう。
てゆうかこの想像が中っているならデジタルにする意味はあんまり無いしな。
耐ノイズ性(デジタル通信用途には同軸ケーブルは機構的に元々耐ノイズ性は高かった筈)やその他の機構的信頼性であんな値段になるとは一寸考え難いしなあ。
アナログ信号の通るケーブル類に或程度の金をかけるのは解るのだが・・・。
一度試してみたいけれど、買うのは馬鹿らしい。
誰か呉れないかな。
あれか、ブランドタグを付け替えるだけで値段が飛び上がるどうってことない服とか鞄とかみたいなもんか。
私にはあほくさく思えることが、その筋の人達には非常に重要だってこともある。
然しその場合も、ブランドタグを付け替えることがそのコートをより暖かくする訳ではないことを、その筋の人もちゃんと心得ている、という点がオカルトオーディオとは違う点だ。
「幸せになる壺」とか「金がどんどん貯まる黄色い財布」とかの方が近いかも知れない。
私の抱いている嫌悪感で比較するなら、ああ、確かに同程度だ。
序でにUSBケーブルやFireWireケーブルでも似たようなことがある。
「オーディオ用」と銘打ったすげー高いやつ。
或は控えめに(?)オーディオ「グレード」等と書いてあるやつ。
あんなん意味あんのかと思う。
でも「これで音が良くなりました」的な話は聞くしな。
確かに断線し難くシールドも十分に施されたものと断線し易くシールド処理のされていないケーブルで、エラーの起こり易さは違うだろう。
然し普通の3mで高くて2000円程度の確っかりしたものとその10倍の値段のものとで、「音質的に」どれだけの差があるのだろう。
オーディオ機器にまつわる言説には、嘘や思い込みの言説とまともな言説とが混在しているのが厄介だ。
嘘臭いけど本当だということもあるし。
間違っちゃいないけれど些細な差異を大げさに誇張する言説もあるし。
或は理由の説明は間違っているが実際に効果はある、なんてこともあり得る。
勿論人を喰い物にする完全な嘘っぱちもある訳だ。
違いが判らないのは耳の所為だと言われれば自尊心が妙な働きをして評価を覆してしまうかも知れない。
或は自分の支払った対価を音の良さと誤認してしまうかも知れない。
自分で選択して高い金を払って結果的に音が変わったら、その変化は即ち音が良くなったということなのだと思いたくなるのも人情。
或は買った機材の細部まで聴き込もうとして普段より大きな音を出して、それで音が良くなったような錯覚に陥ってしまったり。
好みの問題があるのも話をややこしくしている。
或はそれを逆手に執って「いやあ、諸君はこれは拙いと言うかも知れないが、私は好きなんだ」と、好みの問題に逃げ込むこともできる。
序でに自分が好みの問題に逃げ込んでいることを自分で認識できないかも知れない。
環境や機材の組み合わせの違いも話を複雑にする。
多くのことの理由がキッチリ体系立てて説明されない或は説明できないことも、問題を助長している。
普段知ったような口を利いている私も、実際多くのことを知らない訳だし、実は非常に重要な知識が致命的に抜け落ちているということもあり得る。
然し、まあなんでもそうだけど、我々が何か判断しなきゃ不可ないときは、どうしたって現時点の持てる知識やら感覚やらをできるだけ上手に駆使して判断していくしかない訳だ。
そういう訳で、厄介なことに、私のオカルト呼ばわりしているところのなまら高価なデジタル同軸ケーブルやらUSBケーブルやらが、他の普通の確っかり作られたデジタル同軸ケーブルやらなんやらと比べて、私の甘っちょろい考えを超えたところにある理由によって実際に音質向上に役立っている可能性もあるのだ・・・。
ほんとうは「これで音が良くなりました」というのが正しいのかも知れない。
私の抱いている嫌悪感は「単なる想像」に由来するものなのかも知れない。
実際に試した訳じゃないからなあ。