2007/02/26

『音楽の基礎』

では本の話でもしよう。
今日の一冊。

音楽の基礎』。芥川也寸志。
音楽の基礎

1971年の夏に第一刷が発行されている、まあまあ古い本。
71年頃というと、クラシックの流れの音楽では、作曲家がその担い手として主役であった「作曲家」の時代が本格的に終焉を迎えて「指揮者」の時代へと変わって了ったという頃かなあ。
この変化はもっと以前から始まってたのだけれど、71年というと、これがすっかり変わって了った、という頃なんじゃないかねえ。
まあ私はあんまりその辺の歴史には詳しくないので、間違ってるかも知れん。
まあいい。
兎も角35年前。

で、本の内容。
音の関係や規則について、その成立の歴史やそれについての著者の解釈など交えて書かれている。
西洋クラシックに基礎を置きながら、古楽や60年代までの「現代音楽」や民族音楽や電子音楽や雅楽といったところにまで言及がある。
彼の独自の解釈が出ていたり彼自身の議論をしているところは、情報量が少なくて少々危なっかしいが、それ以外の事実を書き連ねているところは読む価値はあると思う。
まあそもそも彼の独自の見解を表明する為の本ではなさそうなので、そこのところは、まあそんな考え方もあるか、という程度に捉えておけばいいのかも知れない。
が、その独自の見解そのものには、私自身幾らか共感を覚えなくもないし、それなりに説得力はある。

特に音楽の専門的な教育を殆ど受けていないが一応基礎的なことぐらいは知っておきたいというようなポップ音楽の担い手達は、まあ読み易いし、一回読んどくことを勧める。
学校の音楽の教科書以上にまともなことが書かれていない上に視野の狭い「ポップの作曲法」みたいな本を読むよりはずっと為になるだろう。
とはいえ、この本は一般向けの本なので、勿論一般の音楽好きの人達が読んでも十分面白いだろう。
但しこういった本を今までにも沢山読んできた人には、大して新しい知識を増やさないかも知れない。
専門的なものとしての「音楽」の入門書ではあるが、音楽のバリバリの専門書という訳ではない。
入門書なので、恐らくは学校の音楽の教科書が理解できるぐらいの知識があれば、この本も簡単に理解することができるだろう。
つまり音楽に興味を持っている人なら、大体誰にでも解るようには書いてあると思う。

全体的には、よくできた本だと思う。
71年の本だけど、当時の空気を知るというよりは、この2007年にも入門書として十分に有用だろう。