2007/04/20

コミュニタリアニズム

じゃあ最近ぺらっと読んだ本の中で紹介するに足ると思った本の話でも。

日本を甦らせる政治思想

日本を甦らせる政治思想 菊池理夫

「リベラルコミュニタリアニズム」について簡単に解説してある本。
これで日本がどこかから蘇るかは議論の余地があるが、兎も角議論するに値する。
まあオタクブームと重なって今頃流行ってる「ポストモダン好き」達の主張についてあれこれ言うことを考えると特に。

私はどっちかというとリベラル寄りなのでガチガチののコミュニタリアニズムは採らないが、然しコミュニタリアニズムにはそこそこ興味はあるし、実際私の政治についての考えについて重要な殆どの部分はコミュニタリアニズムと大して変わらない。
但私は、例えば或個人がどのコミュニティに所属しているのか、そしてどのコミュニティの物語を受け入れているのか、ということについては、コミュニタリアン達が考えるよりももっと多重的な仕方で様々の所属し得るし実際そうしていると考えるし、従って、自分の属するコミュニティのメンバー達が当たり前に受け入れている或信念が受け入れ難く間違った信念だと考えたときには、そのコミュニティのメンバー達を説得することも重要だが、そのコミュニティから離脱することを決めたときにはコミュニタリアン達が考えるよりももう少し少ないコストで済ませられる思う。
それから私はコミュニタリアン達と同じく当たり前に受け入れられている或は受け入れられるべき善や悪(特に民主主義にまつわる善悪)を結構強調するが、然し、公的には打ち遣って置いてもそれ程問題にならないだろうと想定されるような種類の差異や、公的に重要な差異ではあるがその差異を保ったままでも共存や連帯が可能となるかも知れないという可能性を残している差異について、私はコミュニタリアン達よりも強調する。と思う、多分。
因みに我々の共通の論敵はネオリベラリズムや差異ばっかり強調して勝手に絶望してるような「ポストモダン好き」の相対主義者達、という訳だ(何度も言うが、これは本物のポストモダンの時代の思想家達が悪かったのではない)。
簡単に言うと我々と論敵との差異は「まともな民主主義」という実現可能な理想や希望を持っているか否か、という点にある。
この本の著者も反リベラルのガチガチのコミュニタリアニズムというよりは、コミュニタリアニズムとリベラルとの共存を可能にする道を、コミュニタリアニズムの視点から探る、といったスタンスを採っているように見える。
まあ私は、少なくとも上記の理由で、彼とは違ってよりリベラル寄りなんだが、まあそれでも彼と私は結構近いところに居ると思う。
なんか最近読む本読む本みんな「ポストモダン好き」一色だったんで、少々ゲンナリしてたところだったのだが、久しぶりにまあまあ近い立場の本を読んで、一寸は深いレベルで自分の考えを検めることができた。
が、この本の欠点は、テイラーとかマッキンタイアとかエツィオーニとか出てくるのだけれど、その重要な思想的背景についての議論も解説も殆ど無かったんで、彼らを知らない人はその上っ面の部分だけしか分からないんじゃないかと思うし、それじゃあ彼らの魅力はあんまり伝わらないんじゃないだろうかと思う。
勿論上っ面の部分だけでも或程度魅力はあるけれど、この本を読むだけならその限定的な魅力が彼らの魅力の全体であるかのように見えるだろうから、読む人が「テイラーそれ程面白くねえ」と思うかも知れないのが一寸悔しい。
まあ私が哲学出身(もう「出身」を付けなければならないのが悲しい)だから思想的背景に興味がより強いだけなのかねえ。
でもかなり重要だと思うんだけどなあ。
最初の方に一寸コミュニタリアニズムの簡単な解説があるんだけど、その後読み進めればより詳しい解説が出てくるのだろうと思ってたら殆ど出てこなくて、こりゃイカンのじゃないかと思いました。
ポストモダン好きとかネオリベラリズムとかに苦言を呈するのは飽きる程繰り返し出てくるんだけど、それを削っていいから、もっと詳しく思想的背景についての解説をするべきだ。

という訳で、或程度コミュニタリアニズムについての基礎知識を持っていないと、著者の主張はなんとなく理解はできてもその主張の魅力やその主張を支えている思想の魅力を理解できないんじゃないかと思うので、コミュニタリアニズムの入門書としては余り良くないかも知れない。
日本語ならエツィオーニとかを読んだ方が入門としてはいいだろう。まあそっちの方が直段は高いけど。
これは内容は平易で理解し易いが、特に深い議論がある訳ではないので、既に入門して了った人が読んでもそれ程重大な収穫は期待できなさそうだ。
深いところの議論が無いのがイカン。

うぉ、なんか今デジャブが!
すげー!
デジャブを感じてるところまでデジャブだ!
え?私、永劫回帰してる?と思える程。
Dioの血に関係が?
本の話に関係ないけど。

で、話を戻すと。
この本のメリットは新書の嵩張らなさ安さとお手軽さかねえ。
という感じです。
まあ読んでも悪いということはないと思う。
それなりに為になるし、結構面白く読める。


まだ色々言いたいことはあるが、デジャブも体験したことだし、明日早いのでもう寝ます。