2019/07/09

落下

何故こんなことを忘れていたのであろう。
私はいつだって、そうしてきた筈だ。
これは、私の身体に染み付いた技術だ。
そうだった。
思い出した。

私は何かに追われていたのだったか。或は何かを為そうとしていたのだったか。
この街の高台の中腹辺りにに建ったコンクリート造りらしい2階建ての家の屋上から西を見ると、地平線の辺りにぼやけてしまっている海の方へ、夕方へと傾いていくオレンジ色の太陽が層状になった雲のフィルターを通して見える。そんな時間帯だ。行かなければならない。

脚は肩幅より少し大きめに開いて軽く腰を落とし、両腕は大きく開くが肘は自然に曲げる。
そうやって、私の前に存在する空気を受け止めるのだ。
そうして眉間の下側の奥1cm辺りと両肩甲骨の上部の間辺りとに私の魂を集中させると、首の後ろ辺りから私の意識が気体のようになって吹き出すようになる。
そして体がふっと浮く。
一旦体が浮けば、あとは空気をよく受け止めて、風の中を滑るのだ。
凧糸の無い凧のような要領である。

私は落下しているのだが、この世界ではそれは飛行という現象として現れる。
これが、私の飛行術である。

というような夢を見た。
あとなんか重要なことを夢の中で考えて居た筈なのだけれども、そして何か閃いた筈なのだけれども、全部忘れて了った。
起きて暫くは覚えていたのだけれども、布団の上でグズグズしているうちに忘れた。
枕元にペンとメモ帳が必要だ。