2019/06/30

Epiphone Les Paul SLを改造した話

ギターの音や使い勝手を追求して、結果的にP.U.を載せ替えるだのお気に入りのポテンショメータを使うだの、或は木を掘るだの塗装し直すだの、改造に手を染めてしまう。
自分の音を追求するってのは、楽しいものだ。

それとは別に、改造行為そのものも楽しいものだ。

つうことで、主に改造そのものを愉しむ為に、EpiphoneのLes Paul SLを買った(→Amazon)
Les Paulとか言ってるけど、見た目は完全にMelody Makerですな。

10,000円でそこそこマトモなギターが買えてしまう時代。
而もAmazonで。
10,000円ぐらいなら、ギターでもまあAmazonで買ってもいいかと思える。
そして10,000円でも意外とマトモ。
そら10倍以上の値段のギターと比べたら駄目だけれど。
でも50,000円のギターと比べたら、コレ5本買えるんだぜ?(なんちゅうレトリックか)
20,000円のギターでも、コレが2本買える訳だ。
なのにちゃんと音が出るし、指板も大体真っ直ぐだし、チョーキングとかでチューニングが狂うこともない。
ちゃんと楽器として使える。

「一寸ギターなるものでも弾いてみようかな、あわよくば自分の趣味にできたらいいな」ぐらいの覚悟の初心者にもオススメすることができるようなクオリティと価格と入手性のバランス。
最初の1ヶ月間ぐらい練習してあとは部屋を飾るオブジェになることが目に見えてるような人物にも躊躇うこと無くお勧めできる価格で、もしかしたらハマってギター道を突き進む羽目になり、最初の1-2年はコレがメインギターになるような可能性が感じられる人物にもまあお勧めしてもいいぐらいのクオリティ。
まあそういう可能性のある人には、実際のところは、どちらかというともう何千円か金を出して貰ってSquier辺りを勧めるのだけれども・・・。

無改造状態では、音とか一寸Danelectroのショートホーンの雰囲気がある。
ボディが軽いポプラ材なんで、生音が結構でかくてエアー感があり、少しセミアコっぽい感じがある。
チープはチープなんだけれど、弾いてて厭になってくるチープさじゃない。
ピックアップは見た目より出力がある感じだが、ちょい細めの音で、リップスティックっぽいってことはないけれど、でもなんかDanelectroを思い起こさせる。
なのでDADGADにチューニングしてKashmirを弾かざるを得ない。
太陽をして我が面上に降り注がせよ、我が夢を星々で満たしながら、っつて。

ネックはカマボコDシェイプで、厚い訳じゃないがエラが張ってて、ぶっちゃけ弾き難い。
クラシックギターのネックを縮小したみたいな感じのシェイプ。
Epiphone曰く「1960s Slim Taper D-Profile」ってことだけど、コレでスリムやったら他のどんなんやねん、と思う。
因みに同じEpiphoneのCasinoも持ってるけど、そっちはGibosonとかと似たような普通のシェイプで、弾き難いと感じたことは無い。

ブリッジは固定だけれど、wrap around compensated combo bridgeってヤツで、オクターブチューニングは意外と合ってくれる。
完璧じゃないけれど、普通の3サドルのテレキャスよりは断然合う。


つうことで、改造タイムですわ。
やったこと:
  • ペグをマグナムロックに交換
  • ナットをTSUQに交換
  • ストラップピンをデカいヤツに交換
  • ブリッジをTOMタイプに交換し、ブランコタイプのテールピースを追加
  • P.U.をDiMarzioのThe Chopper(リア)とGibsonのP-90(フロント)に交換
  • 回路系の総取っ替えし、ジャックを横出しにし、導電性塗料を塗る
  • ブリッジ周りの塗装を剥いで、白く塗る
と、大体こういう感じ。
リスト化すると大したことなさそうだけれど、実際はめっちゃ時間掛かった。

Les Paul LS
Les Paul LS posted by (C)Ludwig D. Omen

・ペグ

ペグはロック式と決めている。
但しSperzelを買うのは勿体無いので、Gotohの安いマグナムロック(「トラッド」じゃないヤツ)(→Soundhouse)にした。
けど結構木工作業が必要だった。
先ず、元々の穴径が小さいのでドリルで拡げてやる必要があった。
そのとき、塗装が硬く木が柔らかく脆いので、塗装がヒビ割れて飛んでいったり木がササクレて飛んでいったりしてしまい、穴周りがボロボロになった。
ボロボロになったところは木質ラッカーパテで補正した。
一応形にはなったけど、木質エポキシの方がよかったかな。
今思えば穴周りの塗装をナイフか何かで一旦削ってから穴開けすればよかったか。

またヘッドが厚過ぎて固定用ナットやポストの高さが微妙に足りず、ヘッド裏の塗装を剥いで少し木を削ってペンキ(白で)を塗り直すと、ギリ取り付けることができるようになった。
一般的なギターのヘッド厚が大体14.5mm前後だが、コレは16.5mmあった。
1.5-2.0mmぐらいは薄くしないと不可ない。
裏側の塗装が1.0mmぐらいあるので、それ+αちょい削るぐらい。
でも木に硬さが無いので手ではメッチャ削り難い・・・。

・ナット

ナットはGraph TechのTUSQと決めている。
元のナットを剥がして、買ってきたEpiphone用のTUSQ(→Soundhouse)の裏のバリを平らに削って当ててみると、0.4mmぐらい高さが足りん。
買ってきたままの状態から0.1mmも削ってない(と思う)ので、元々高さが足りんかったのだ。
なので0.5mm銅板を切ってシムを作り、それを0.1mm削って下に履かす。
少量のTitebondで貼り付けて、幅方向の余りを削って完成。

・ストラップピン

でかいストラップピンを付けるのが私の中での最近の流行り。
なのでGotohのでかいヤツ(→Soundhouse)に交換する。
これだけでストラップが抜け落ちることはそうそう無いけれど、コレに更にHarry'sのゴムのストッパー(→Soundhouse)を付けとけば、まあ抜けない。
多分ロックピンより安全なんじゃないかと思う。

ロックピンは、Schallerをベース用、Jim Dunlopをギターのボディエンド側用として、一応両方使ってた時期があるけれど、なんやかんやで結局使わなくなってしまった。
因みにギターのヘッド側のストラップピンは「デルリン2枚重ねのダサくて安っぽいアレ」でお馴染みのLoc Strapを使ってた。
ロックピンは、ネジが緩み易いとか、なんかカチャカチャして鬱陶しいとか、なんかデカいとか、シールドをギター本体とストラップで挟んで固定できないとか、ストラップを交換するのにラジペンやらモンキーやらの道具が要るとか、あと高いとか、そういう細々としたマイナスポイントはあったんだけれど、そんなには本質的なマイナスポイントとして感じていなかったように思える。
当時はストラップ抜けを防ぐには、ロックピンか或はLoc Strapしかなかったのだが(私がそれ以外を知らなかっただけなのかも知れないが)、結局のところ、Harry'sが出てきて駆逐されてしまったのだ。
最初は私もあんなゴムの輪っか如きに背中預けられるかと思っていたのだけれど、一旦使ってみると、必要に対して十分な機能でスマートだし、見た目的にも他を邪魔しない使い方も敢えてアクセントして使う使い方もできたり、気軽に払える金額(ゴムの輪っか2枚で500円ってのは高いと思うけど)だったりして、結局ロックピンは使わなくなってしまった。

・ブリッジ

特にこれといった理由も無く、GotohのTOMブリッジ(→Soundhouse)に替える。
そしてテールピースはブランコタイプ(→Soundhouse)。SCUD。
本当はストップテールピースにしたかったのだけれど、ピックガードの位置が邪魔してアンカーを打ち込めない。
しょうがないのでブランコテールピースになったけど、まあコレはコレで格好良い。

元々のブリッジのアンカーを抜くとφ12の穴が開く。
折れたドラムスティックでダボを作り、この穴を埋める。
堅いオークのドラムスティックを使ったけど、柔らかいメイプルでよかったか。
13mmのドラムスティックを削って12mmに仕上げ、横に縦溝を掘って空気が逃げる部分を作り、それにみんな大好きTitebond(→Amazon)を塗ってアンカーの穴に叩き込む。
そういやギターリペアマンのTitebondに対するあの絶大な信頼って何なのかね。
「それ物性とか経年や熱や水分への耐久性とか見てもエポキシ系の方が正解じゃね?」ってときでもTitebondを使わはる。
何か理由でもあるのかと思って、ビビって私もTitebondを使ってる・・・。
で、Titebondが固まったら、ダボの余りを削ってギターの表面が平らになるようにする。
平になったらダボの中心より少しボディエンド側に、ブリッジのポスト用の穴を開ける。
実際のブリッジを使って位置決めをしてφ3.2-3.5の穴を開ける。
その穴のうちコントロール部寄りの穴からコントロール部目掛けて斜めにφ2.5ぐらいの穴を開け、電線を通してアース線にする。
アース線が噛み込むようにポストを打ち込んで、ブリッジ完成。
因みにこんなフラットトップギターでブランコテールピースにしたりするとブリッジ部で弦の角度がつかないので、弦落ちを防ぐ為にブリッジの駒の溝切りは一寸深めが良い。

・テールピース

ボディ厚みとボディエンド部品の大きさが合ってないので、ボディエンド部品の加工が必要。
ボディエンド部の3つの山のうち、真ん中のもを切り取り、エンドピン用の穴を開け直す。
因みにボディの方も、ヘッド-ネック-ブリッジの延長線上にエンドピンがある訳じゃないので、この延長線上にエンドピンの穴を開け直す必要がある。
この位置決めの為に、一旦弦を軽めに張った方が確実。
弦は使い古しのでOK。

・ピックアップ

リアはDiMarzioのThe Chopper(→Soundhouse)
以前はSquireのDuo-Sonicに載せてたヤツ。
ダブルレールのシングルサイズハムで、なんでもできる系の音。
基本フラットで、ハイは出るけどトレブリーって程でもなく、一寸ローミッド厚めかな?ぐらい。
Duo-Sonicは同じDiMarzioのAir Classic(→Soundhouse)に載せ替えたので、それで余ってた。
ピックガードマウントにしてるんだけれど高さが足りず、高さ調整用のスプリングを入れることができなかった。
なのでベタ付けになってて高さを調整することができない。
けどそれで丁度の高さになったので、音的にはまあ問題無し。

なんかDiMarzioばっか使ってんなあ。
ホントウはどちらかというとSeymour Duncanの方が好きな筈なんだけれど。

フロントはGibsonのP-90。
Les Paul Classicに元々載ってたヤツで、コレも余ってたヤツ。
そのままでは当然載らないので、ピックガードの加工とボディのザグリの加工が必要。
また、高さがビミョウなので、12mmのMDFを下に貼り付けて、それに丸皿タッピングネジで取り付けている。
丸皿タッピングネジは、普通ではネジ専門店でも十分な長さのものを置いてないので、持ってなければ楽器パーツ屋とかでP-90用のボディ直マウント用のネジ(→Soundhouse)を買う必要がある。

・回路系

ボリューム1発。
ALPSのB500kΩで510pFハイパスコンデンサ。
ツマミが長過ぎたので、いい高さになるように削った。
ピックアップセレクタはオリジナルのまま。
弾く時に手元近辺にボリュームがあるのが厭なので、元々ボリュームがあったトコには何も載せず穴が空いたままで、ピックアップセレクタがあったトコのにボリュームを載せ、アウトプットジャックがあったトコにピックアップセレクタを載せている。
アウトプットジャックはというと、ボディの横に穴を開けて、普通のGibsonのLes Paulみたいに横出ししている。
SCUDのジャックプレート(→Soundhouse)に、大量に余ってるREANのジャック(→Soundhouse)
ピックガードには元々アルミテープでシールドしてあったが、安っぽいテープで気に入らなかったので全部剥がして、厚めのアルミ箔を両面テープで接着した。
キャビティに導電性塗料も塗ってシールドは完璧。

・ストラップ

ストラップは、ROTOSOUNDのめっちゃ安いナイロンのヤツ(→Soundhouse)
チープだけどなんか格好良い。

・弦

弦はElixirのNanowebの0.010か0.011のセット。
いい感じの金属感とアコースティック感が出る。


という感じで、セットアップしてアンプに繋いで弾いてみると、意外と悪くない音。
一寸Danelectroっぽさも残ってて、特徴的だけど普通に使いたくなるぐらいの音。
セミアコっぽいエアー感がありつつも金属弦らしさもあって、そしてペコペコしたチープさもあり、それらのバランスが素晴らしい。
歪ませると、シールドがガッツリ効いているとはいえP-90のハムノイズは乗るが、まあこのギターなら許せる。
ブランコテールピースが結構利いてる感じ。
フロントのP-90の音がゴン太なので、太くなり過ぎないように調整する必要がある。
見た目的にはMelody Makerっぽさが減ってしまったのは残念だけれども、ビザール感が増したので良し。
中途半端なダサさがより振り切ったダサさになった。それは良いことだ。振り切るって大事やね。
ネックがなんか太くて一寸弾き難いけど、コレはコレで使えるギター。
ネックが折れたりしても懐的にはそんなにダメージは無いし(パーツは回収するけど)、ガシガシ使っていけそう。

つうことで、改造する時に気を付けること:
  • ブリッジは替える必要が無い。やるならBadassタイプのブリッジに交換するのが楽。
  • ポン付けてピックアップを交換するなら、特にリアは背の高いピックアップを探すこと。
  • 木加工は地獄。木材が柔らか過ぎ、塗装が硬過ぎる。なるべく無加工が吉。
  • ペグ交換も覚悟が必要。背の高いものでなければポン付けできない。
  • ナット交換は、ブランクナットを買ってきて削り出した方がいい。
  • ノイズ対策としては、基本的には導電性塗料を塗るだけでOK。
  • チープを楽しむこと。
という感じで。