2020/10/10

スーパーギタリスト

スーパーギタリストが死んだ。

タッピングの生みの親・・・かどうかは議論の余地があるらしいが、少なくとも1つの奏法として成立させ、その可能性を世に知らしめた最初の人ではあった。
Edward Van Halen に因ってタッピングの技術が確立された1978年以降2000年より前には未だ、タッピングという奏法はジャンボフレットが打たれたテクニカル系ギターに細い弦を低めに張ってフラッシーなソロを弾く人達用のもの、という認識だったように思われるが、喜ばしいことにこの2020年の現在ではギターの奏法と音楽のジャンルとの組み合わせについての思い込みという垣根は取り払われつつあり、その結果全てのギタリストにとって必ず習得しなければならない技術の一つになっているように思える。

タッピングが、見た目が派手で飛び道具的でトリッキーな雰囲気を持った奏法であることから、そんな「軽薄な」奏法の親玉として認識される所為でよく忘れがちだけれども、彼はギタリストとしての地力故にスーパーギタリストの一人に数えられて尊敬を集めているのだ。
つうか彼が「スーパーギタリスト」の概念のオリジナルなのであって、他のスーパーギタリストとは彼に似た性質を持つ人のことを言う、と言っても強ち間違いではないと思う。

また初期には色んなパーツを寄せ集めて自分で組んで自分で塗装したものを使っており、機材イジリが好きな私としては親近感を覚える。
またその自作ギターが後世のコンポーネントギターやテクニカル系のギターの雛形となっていたり、彼の使う機材が後世の機材の発展の方向性を決定付けていたりする。

只のタッピングおじさんじゃなくて、色んな方向から見ても、ギター音楽界に対してマジで多大な影響を与えた人なのです。

私自身は彼から直接的に影響されたと言うよりは、どちらかと言えば彼に影響されたギタリストや彼に影響された音楽に影響された、ぐらいの感じである。
影響作用史的には私は孫世代ぐらい。
Van Halen の音楽は、私がギターを始めた頃には既に必修科目の教科書であり、真面目にギターに取り組むなら何曲かはコピーしておかなければならないような存在だった。
私は不真面目なのでそんなにはコピーしなかったけど。
そもそもそんなには好きでもなかったし。
CD も買ってたし嫌いということはなかったけど。
「Balance」がめっちゃ格好良かったり「Van Halen III」にガッカリさせられたりとか、思い出も無いではないが、Van Halen が直接的に私にとって重要な位置を占めているという訳ではない。
然しこんな私にも、彼の偉大さは身に沁みて知っている。
ギターを弾くのであれば、どうやったって彼の影響下に在ることになるのだ。
彼が、スーパーギタリストであった。