2020/08/14

サイン有料化

私は知人 A とサッカーの試合をスタジアムまで見に行った。
私は誘われるままに付いて行ったのだと思う。
A の方が勝手を知っているらしい。私はよく分からない。
私がよく分からないということは A も或程度は承知している筈だ。
私の呪いのパッシブスキルであるところのシッタカブリ(レベル:中2) が余り発動しないで済む。

試合は、雰囲気から察するに、ビッグクラブ同士の試合というよりは国際親善試合とかオールスター的な試合だったように思える。
有名選手が多数出場しているらしいし。
多分ヨーロッパの何かだ・・・。

私は昨今のサッカー界の事情を全く知らない。
今誰が日本代表なのかも知らないし、多分言われても分からない。
海外も、メッシとかなら名前は知ってる。
そういえば野球も阪神の現役選手とか誰一人知らない。
否、藤川球児は慥か未だ現役だったような気がする。

サッカーの試合が終わって、私達は選手のベンチの横を通って帰る。
多くの選手が未だベンチの周りに残っていた。
A がベンチの方へ歩いて行き、一人の選手と話している。
どうやらサインを貰うらしい。
A が選手に一万円札を渡した。
サインは有料なのだそうだ。
話を聞いていると、奥の方に居る選手はロナウジーニョクラスのプレイヤーで、彼にサインをしてもらう場合は10万円なのだそうだ。
私は努めて平静に、新しく知った文化や慣行を容認するような口調で「へぇ、今そんなことなってんの」と言う。
A の説明では、対価の適正化だとか受益者負担の原則だとか神の見えざる手だとか、なんか大体そんな話の関係で、最近はもうこうなってるのだそうだ。
これらの言葉は私が嫌悪している思想傾向にある者達が、世の中の複雑で難しい物事を過剰に単純化したり短絡させたりすることで、自分自身や他者に対して何か解ったような気分にさせる為によく利用する、空っぽの言葉であることが非常に多い。

レジ袋有料化の目的の説明が「プラスチックごみ削減」から、実際の効果の見込みが非常に限られることが周知され始めると「プラスチックごみ削減という意識の強化」に重きを置くように変化している(実際はオリンピックに向けて「ニホン、カンキョウ、カンガエテル」と海外へアピールしてますと国内に向けて格好付ける為ってのがメインだろうけれども)ことと「有料化」の部分で私の中で少しリンクしたこともあり、私はサイン有料化にも強い不信感と反発を覚えたのだけれども、然し若しも実は私の知らない間にショービズの世界において「サイン」の社会的意義や立ち位置が変わってました、みたいなことがあったとしたら、もしかしたらサイン有料化についてもじっくり考えれば許容できるような理解へとどうにかして辿り着けるのかも知れないと思い直した。

私はこれがまず本当にその私の嫌悪する概念や思想傾向の産物に該当するのかを内心検討しつつ、私の表情が反射的に変わってしまわないように努め、またそれが所謂「遠い国で起こったことであるかのような」のような、或は興味の無いことを聞かされて社交辞令的に驚いた振りをしたかのような調子を作りながら、息の最後の方を使って「んぁ、そうなん」と吐き出す。

・・・という夢を見た。